スペーシアMK32S ブレーキ異音|パッド0mm、ローター交換とブラケット清掃
164,099km 実車/フロントのパッドとローターを交換し、錆びたキャリパーブラケットも清掃。整備書の締付トルクつき
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「ブレーキを踏むと異音がする」。そんな相談で入庫したスズキ スペーシア(DBA-MK32S・走行164,099km)を点検すると、フロントのブレーキパッドの残りが0mmになっていて、ブレーキローター(ディスク)まで削れていました。
今回はフロントのパッドとローターを交換し、あわせて錆びていたキャリパーブラケットをワイヤーブラシで清掃してグリスを塗りました。交換後、異音は止まりました。パッドが無くなるとなぜローターまで替えることになるのか、ブラケットの錆を落とす理由、MK32Sの整備書の締付トルクを、実車の写真で解説します。
この記事で分かること
- ブレーキの異音の正体だった「パッド0mm」と、削れたローターの状態
- パッドだけでなくローターも交換した理由
- キャリパーブラケットの錆を落としてグリスを塗る理由
- スペーシアMK32Sのフロントブレーキの締付トルクと、パッド・ローターの限度値(整備書)
今回の車両と症状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種・型式 | スズキ スペーシア DBA-MK32S(エンジン R06A) |
| 初度登録 | 2014年6月 |
| 走行距離 | 164,099km |
| 入庫時の相談 | ブレーキを踏むと異音がする |
| 点検結果 | フロントのブレーキパッドの残りが0mm。ローターまで削れていた |
| 作業 | フロントのブレーキパッド(左右1台分)とブレーキローター(左右2枚)を交換/キャリパーブラケットの錆をワイヤーブラシで清掃し、グリスを塗布 |
| 使った部品 | パッド・ローターとも社外品(純正品ではない) |
| 結果 | 交換後、異音は止まった |
異音の正体|パッドが0mmになり、ローターまで削れていた
外した古いローター2枚と、古いパッドです。パッドは摩擦材(ローターに押し付けて止める材料)がもう残っていません。ローターは、パッドが当たる面が削れて、外周に段(パッドが当たらない縁の部分との段差)ができています。
ブレーキパッドは、鉄の板(裏金)に摩擦材を貼り付けた部品です。一般に、摩擦材が無くなると裏金がローターに直接当たり、ローターを削ってしまいます。ブレーキの効きにも影響が出るおそれがあるので、異音に気づいたら早めに整備工場に相談してください。
スペーシアMK32Sの整備書では、フロントのパッドの厚さ(摩擦材の厚さ)は新品で10mm、限度値は2mmです。限度値以下なら1台分セットで交換するよう書かれています。今回は、その限度値をとっくに下回った0mmでした。
| 点検項目(フロント) | 基準値(新品時) | 限度値 |
|---|---|---|
| ブレーキパッドの厚さ(摩擦材) | 10 mm | 2 mm |
| ローターの厚さ(12インチ ソリッドディスク) | 11 mm | 10 mm |
| ローターの厚さ(13インチ ベンチレーテッドディスク) | 17 mm | 15 mm |
| ローターの振れ(外周から約15mm内側で測定) | — | 0.10 mm |
出典:スズキ スペーシア(MK32系 2013年2月〜)整備書。整備書には12インチ・ソリッドと13インチ・ベンチレーテッドの2つの区分があります。自分の車がどちらの仕様かを確認してから基準値を見てください。
ブレーキの音は、原因によって意味が違います。パッドが減ってきたときに鳴る「キーキー音」がしばらくして消えたら要注意、という話はN-BOXの実例で書いています。今回のスペーシアで確認できた症状は「ブレーキを踏むと異音」で、点検するとパッドの残りが0mm、ローターまで削れていました。
▶ ブレーキのキーキー音が消えたら要注意|N-BOX実車0mm
パッドだけでは済まなかった理由|ローターは交換にした
パッドが0mmになってローターまで削れていたら、その時点で、ローターは交換か研磨(表面を削って平らにし直す作業)が必要になります。削れて段がついた面のままでは、新品のパッドとの当たり方が元に戻らないためです。
研磨という選択肢もありますが、研磨すればローターはそのぶん薄くなります。整備書の限度値(上の表)を下回れば使えません。軽自動車のローターは交換でよいというのが私の考えで、今回も新品に交換しました。
新品のローターです。今回はパッド・ローターとも社外品を使いました。通販で買うときは、フロント用か、そして車検証の型式・車台番号で適合するかを必ず確認してください。上の表のとおり、MK32Sのフロントローターにはソリッド(1枚板)とベンチレーテッド(内部に冷却用のすき間がある)の2種類があります。
スペーシアMK32Sのパッド・ローターを探す
パッドとローターをまとめて替えるならセット品、パッドだけなら曙 AN-769WK(曙の公式適用表で MK32S・平成25年3月〜平成27年5月のフロント用)。
⚠️ ローターはソリッドとベンチレーテッドの2種類があり、セット品も品番が分かれています。車検証の型式・車台番号と、駆動方式(2WD/4WD)で適合を確認してから選んでください。今回の車に付けた部品とは別の商品です。
■ パッド+ローターのセット
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■ パッドだけ(曙 AN-769WK)
今回のポイント
・パッドが0mmになると、裏金がローターに当たって削れてしまう
・パッド0mmでローターまで削れていたら、交換か研磨が必要(研磨で限度値を割るなら交換)
・軽自動車のローターは交換でよい、というのが整備士naoの考え
キャリパーブラケットの錆を落としてグリスを塗る理由
今回の作業で、交換部品と同じくらい大事なのがここです。キャリパーブラケット(整備書の呼び方は「キャリパのキャリア部」)は、ブレーキパッドを保持している金具です。パッドはこのブラケットにはまっていて、ブレーキを踏むとブラケットの上を少しずつ滑りながらローターに押し付けられます。
このブラケットに錆が出ると、パッドの動きが悪くなります。だから私は、ブレーキの作業でブラケットが錆びていたら必ず清掃しています。今回のブラケットも錆びていたので、ワイヤーブラシで錆を落とし、グリスを塗ってから新しいパッドを組みました。
⚠️ グリスはブレーキ用のものを、決められた場所に 整備書では、パッドとアンチノイズシム(パッドの裏に付く鳴き止めの薄い板)の合わせ面に、ラバー兼用ブレーキグリース(99000-59124-006)を塗るよう指示しています。ブレーキグリスはローターの摩擦面やパッドの摩擦材に付けないでください。
交換作業のポイントと締付トルク(整備書)
⚠️ ブレーキは命に関わる部品です ジャッキアップしたらウマ(リジッドラック)をかけ、ジャッキだけで支えた車の下に入らないでください。ボルトはすべて規定トルクで締め、作業後はブレーキペダルを何度か踏んでパッドをローターに当ててから走り出してください。
ジャッキアップから試運転までの一連の作業です。手順は整備書(フロントブレーキパッド・ディスク・キャリパの取外し/取付け)に沿っています。【今回の作業】と書いた工程は、整備書の手順ではなく今回追加したものです。
| 順 | 作業 | 締付トルク |
|---|---|---|
| 1 | ジャッキアップしてウマをかけ、フロントホイールを外す | — |
| 2 | キャリパピンボルトを外し、キャリパのシリンダ部(ピストン側)を外す。ブレーキホースをねじったり引っ張ったりしないよう、針金などで吊るす。外している間はブレーキペダルを踏まない | — |
| 3 | パッドとパッドスプリングを外す | — |
| 4 | ブレーキホースを付けたまま、ブラケット(キャリア部)ごとキャリパーを外す(ブレーキキャリパボルト) | — |
| 5 | ローターを外す。整備書では、M8のボルト2本を均等に締め込んで、ハブから押し外す | — |
| 6 | 【今回の作業】ブラケットの錆をワイヤーブラシで落とし、グリスを塗る | — |
| 7 | 新しいローターをハブに付ける | — |
| 8 | ブラケットをナックルに取り付ける(ブレーキキャリパボルト) | 鉄ナックル 85 N·m アルミナックル 115 N·m |
| 9 | パッドとアンチノイズシムの合わせ面にブレーキグリスを塗り、パッドスプリングとパッドを組む。ピストン側のパッドは、ウェアインジケーター(減ると音で知らせる金属の爪)を上に | — |
| 10 | シリンダ部をブラケットに戻し、キャリパピンボルトを締める | 26 N·m |
| 11 | ホイールを付け、ホイールナットを対角の順に締める | 85 N·m |
| 12 | 走り出す前にブレーキペダルを何度か踏み、パッドをローターに当てる。ブレーキが正常に効くか確認する(整備書でも取付け後に作動確認をするよう書かれています) | — |
| 13 | 試運転で異音が消えたか確認する(今回は異音が止まった) | — |
| 締める場所 | 締付トルク | 備考 |
|---|---|---|
| キャリパピンボルト | 26 N·m | シリンダ部をブラケットに留めるボルト |
| ブレーキキャリパボルト | 85 N·m | ブラケットをステアリングナックルに留めるボルト(鉄製ナックル仕様) |
| ブレーキキャリパボルト | 115 N·m | 同上(アルミ製ナックル仕様) |
| ホイールナット | 85 N·m | 対角の順に締める |
出典:スズキ スペーシア(MK32系 2013年2月〜)整備書。
⚠️ ブラケットのボルトは、ナックルの材質でトルクが違います MK32Sには、ステアリングナックル(タイヤを支える部品)が鉄製の仕様とアルミ製の仕様があり、ブレーキキャリパボルトの規定トルクが85 N·mと115 N·mで異なります。自分の車がどちらか分からないまま締めないでください。
新品のローターとパッドを組み付けたところに、締める場所と整備書のトルクを書き込みました。ハブボルト4本(丸印)にはホイールナットを85 N·mで締めます。キャリパピンボルトとブレーキキャリパボルトは、キャリパー(点線)の裏側(車体側)にあり、この写真には写っていません。ブレーキキャリパボルトは、ナックルが鉄製なら85 N·m、アルミ製なら115 N·mです。今回の車は、交換後に異音が止まりました。
交換時期が気になる方へ
今回はパッドが無くなってローターまで削れていたため、パッドに加えてローターも交換することになりました。損傷が進む前に対応できるよう、点検や車検、タイヤ交換のときにパッドの残りを確認してもらいましょう。
パッドの残りが何mmなら替えるべきか、残量からあと何km走れるかは、こちらで詳しく書いています。
▶ ブレーキパッド残量4mmは交換すべきか|車検で言われた時の判断
よくある質問
Q1. ブレーキから異音がします。このまま乗っても大丈夫?
おすすめしません。今回の車はパッドの残りが0mmで、ローターまで削れていました。異音の原因は乗っているだけでは分からないので、異音に気づいたら早めに点検を受けてください。
Q2. パッドだけ交換して、ローターはそのままでもいい?
ローターが削れていなければ、パッドだけの交換で済むこともあります。今回のようにパッドが0mmでローターまで削れている場合は、ローターの交換か研磨が必要です。研磨でローターが限度値(ソリッドは10mm、ベンチレーテッドは15mm)を下回るなら交換です。
Q3. 自分で交換できますか?
工具と知識があれば作業としてはできますが、ブレーキは重要な保安部品です。また、ブレーキディスク(ローター)を取り外す作業や、ブレーキキャリパの取り外しを伴うパッド交換は、法令上の分解整備に当たります(国土交通省の通達 国自整第275号)。自分の車を自分で整備することまで禁止されているわけではありませんが、規定トルクで締められるトルクレンチがない場合や不安がある場合は、整備工場に依頼してください。
Q4. 他の車種のブレーキ交換の例はありますか?
セレナC27で、パッドの残りはあったのにローターの錆で鳴いていた例を書いています。今回とは原因が違うので、見比べると「鳴き」の原因がひとつではないことが分かります。
まとめ
・スペーシア(DBA-MK32S・164,099km)のブレーキ異音は、フロントのパッドの残りが0mmで、ローターまで削れていたのが原因
・パッド0mmでローターまで削れていたら交換か研磨が必要。軽自動車のローターは交換でよい、というのが整備士naoの考え
・キャリパーブラケットの錆はパッドの動きを悪くするので、今回はワイヤーブラシで落としてグリスを塗った
・整備書の締付トルク:キャリパピンボルト26 N·m/ブレーキキャリパボルト85 N·m(鉄製ナックル)・115 N·m(アルミ製ナックル)/ホイールナット85 N·m
・パッドの限度値は2mm。損傷が進む前に、点検のたびに残りを確認してもらう
・交換後、異音は止まった
整備士 nao(ナオ)
元自動車検査員
整備歴15年
本記事の内容は整備マニュアル・メーカーサービス情報・現場経験に基づき執筆。プロメンテ(sps-nk.com)では実車写真と動画を交えた一次情報を発信しています。








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