レヴォーグVM4 フロントロアアーム左右交換
ブッシュ破損(摩耗によるガタ)で「ハンドルを取られる」車を、1級整備士が整備書どおりに直した記録
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こんにちは、整備士naoです。今回はスバル レヴォーグ(VM4・平成28年6月登録)のフロントロアアームを左右とも交換しました。
症状は「走っているとハンドルが取られる感じがする」。リフトに上げて点検すると、右側ロアアームの前側ブッシュ(車体側の付け根のゴム)が摩耗で破損し、ガタが出ていました。ボールジョイントのブーツ破れではなく、ブッシュのガタが原因です。
この記事では、整備書に基づく締付トルク一覧と、取外し・取付けの手順、DIYでいちばん失敗しやすい「1G締め」、そして交換後に必要なアライメントとアイサイト関連の作業までまとめます。
この記事のポイント
・トルク値はすべて整備書(メーカーの修理書)の値です
・アームを車体に留めるボルトは車を降ろしてタイヤが接地した状態(1G)で本締めが鉄則
・交換後は、アイサイト車のレーンキープ学習値クリアとVDCセンサー中点設定(診断機が必要)まで行います

結論:レヴォーグVM4 ロアアーム交換の締付トルク一覧
先に結論です。VM4の板金製(鉄プレス)ロアアームの場合、締付トルクは次のとおりです。「締めるタイミング」まで含めて守るのがポイントです。
| 締付け箇所 | トルク | 締めるタイミング | 注意 |
|---|---|---|---|
| ボールジョイント → ロアアーム(キャッスルナット) | 39 N·m (4.0 kgf·m) |
ジャッキアップ中 | コッターピンは新品 |
| ボールジョイント → ハウジング(ナックル)固定ボルト | 50 N·m (5.1 kgf·m) |
ジャッキアップ中 | 段付き部がハウジング下面に突き当たっていることを確認 |
| スタビライザーリンク(アーム側ナット) | 60 N·m (6.1 kgf·m) |
ジャッキアップ中 | ─ |
| ホイールナット | 120 N·m (12.2 kgf·m) |
浮いた状態で仮締め→接地後に本締め | 対角順に |
| ロアアーム前側ブッシュ(フランジボルト+セルフロックナット) | 95 N·m (9.7 kgf·m) |
1G(接地・空車状態) ※整備書の指定 |
ボルト・ナットとも新品 |
| フロントサポート固定ボルト | 100 N·m (10.2 kgf·m) |
1G(整備士推奨) | ─ |
| リヤプレート固定ナット(後側ブッシュ) | 110 N·m (11.2 kgf·m) |
1G(整備士推奨) | セルフロックナットは新品推奨 |
| リヤプレート固定ボルト(車体側) | 150 N·m (15.3 kgf·m) |
1G(整備士推奨) | スタッドボルトは車体から外したら再使用不可 |
出典:整備書(スバル レヴォーグ フロントサスペンション 構成部品・フロントアーム取外し/取付け)。グレード・年式によりアルミ製アームの設定があり、アルミ製は後側の構造とトルクが異なります。必ずご自身の車のアームを確認してください。

レヴォーグのロアアームが傷んだときの症状
ハンドルを取られる・段差でコトコト音
ロアアーム(フロントアーム)は、タイヤの位置を前後・左右に支えている部品です。車体との付け根にはゴムブッシュ(振動を吸収するゴムの緩衝材)が圧入されています。
このブッシュが摩耗したり切れたりすると、加速・ブレーキ・段差のたびにアームが動き、タイヤの向き(トー)が走行中に変化します。その結果、
- 走行中にハンドルが左右どちらかに取られる(今回の車はこれ)
- ブレーキを踏むと車がふらつく
- 低速で段差を越えると「コトコト」「ゴトッ」と音がする
といった症状が出ます。現場でもレヴォーグのロアアームブッシュの劣化はよく見かけるので、上記の症状があれば最初に疑う場所です。
ブッシュのガタとボールジョイントのガタの見分け方
元検査員として車検の下回り点検でやっていた方法をそのまま紹介します。
- ブッシュのガタ:リフトアップ(またはジャッキアップ+リジッドラック)した状態で、ロアアームの付け根付近をバールで前後にこじる。付け根が目で見て動く、ゴムに亀裂が見える → ブッシュ不良
- ボールジョイントのガタ:タイヤの上下を手で持ってゆする。ナックル(ハウジング)とアームの間でカタカタと遊びがある → ボールジョイント不良
今回の車は右側の前側ブッシュをこじると明らかにアームが動きました。左側は右ほどではありませんでしたが、左右でブッシュの硬さに差があると直進性が乱れるため、左右同時に交換しています。

板金製かアルミ製か・部品の調べ方
VM系レヴォーグのロアアームには鉄の板金製(プレス成形・黒塗装)とアルミ製(銀色の地肌)の設定があり、グレードや年式で異なります。今回の車(平成28年6月登録)は板金製でした。
アームの種類で品番も、後側の取付け構造も、締付トルクも変わります。今回の車(DBA-VM4・平成28年6月登録)で、ディーラー経由で取り寄せた純正品番は次のとおりです。
| 部品 | 純正品番 |
|---|---|
| フロントロアアーム(ARM ASSY F)右 | 20202FJ041 |
| フロントロアアーム(ARM ASSY F)左 | 20202FJ051 |
ただし品番は年式・グレード(アルミ製アームの設定)や品番の切り替えで変わることがあります。注文するときは、車検証の車台番号をディーラーや部品商に伝えて照会してください。
作業前に知っておくこと
ロアアーム交換は「特定整備(分解整備)」
国土交通省の通達(令和2年2月6日 国自整第275号)では、走行装置の「前輪独立懸架装置のサスペンションアーム」を取り外して行う整備は特定整備(旧・分解整備)に当たると定められています。
ただし、認証が必要なのは事業として行う場合です。自分の車を自分で整備することは禁止されていません。一方で、他人の車を報酬を受け取って交換するのは認証工場でないとできません。
必要な工具と、新品にする部品
- トルクレンチ(150 N·mまで測れるものが必要)
- ソケット・メガネレンチ一式、ブレーカーバー
- フロアジャッキ、リジッドラック(ウマ)
- ボールジョイントプーラー(テーパー=円すい形のはめ合い部が固着している場合)、ハンマー
- 浸透潤滑剤(錆びたボルト対策)、プライヤー(コッターピン用)
新品にする部品:
- 前側ブッシュのフランジボルト・セルフロックナット(緩み止め機能付きのナット)=整備書で新品指定
- キャッスルナット(割りピン用の溝が付いたナット)のコッターピン(割りピン)
- リヤプレートのセルフロックナットも、緩み止め効果が落ちるので新品をおすすめします
リヤプレートのスタッドボルトは、車体から外した場合は再使用不可です。外さずに済むなら外さないでください。
🔧 この作業で使う道具(2点)
最大150N·mまで締めるので、トルクレンチは150N·m以上を測れるものが必要です。ボールジョイントのテーパーが固着していたら、セパレーター(プーラー)があると安全に外せます。
① ボールジョイントセパレーター(KTC AS202A)
② トルクレンチ(KTC GW200-04・差込角12.7・40〜200N·m)
⚠️ ジャッキアップ中は必ずリジッドラックで車体を支えてください。ジャッキだけで支えた車の下に体を入れるのは絶対にNGです。ボルトを緩めるときは大きな力がかかるので、車が揺れないことを確認してから作業しましょう。
ロアアームの取外し手順
- 車両をリフトアップ(ジャッキアップ)し、フロントホイールを外す
- アンダーカバー(フロント)を外す
- フロントサポートを外す:固定ボルトを抜いて取り外します
- リヤプレートを外す:ボルトとナットを外して、アーム後側のリヤプレートを取り外します
- スタビライザーリンクを切り離す:アーム側のナットを外します
- ボールジョイントをアームから外す:コッターピンを抜いてキャッスルナットを外し、アームからボールジョイントを抜きます(ボールジョイントはハウジング側に残ります)
- アームを外す:前側ブッシュのナットを外し、フランジボルトを引き抜いてアームを取り外します

⚠️ ボールジョイントのテーパーが固着して抜けないときは、ボールジョイントプーラーを使います。ブーツをハンマーで叩いて破らないように注意してください。
ロアアームの取付け手順
ジャッキアップ中にやること
- 取付け前の点検:新しいアームに損傷・亀裂がないか、ブッシュに亀裂・へたりがないか、ボールジョイントのダストカバー(ブーツ)が破れていないかを目視で確認
- アームを仮締め:新品のフランジボルトとセルフロックナットで、アームをクロスメンバーに仮締め(ここでは本締めしない)
- ボールジョイントを接続:キャッスルナットを39 N·mで締め、穴とナットの溝が合わなければ60°以内で増し締めして合わせ、新品のコッターピンを入れて巻き付けるように折り曲げる。ハウジング側の固定ボルトは、ボールジョイントの段付き部がハウジング下面に突き当たっていることを確認してから50 N·m(今回の手順では緩めませんが、突き当てとトルクは確認しておきます)
- スタビライザーリンクを取付け:60 N·m
- アンダーカバーを取付け:カバーの前端がバンパーの内側に入るように
- ホイールを取付け:浮いた状態では仮締めにとどめ、接地後に対角順で120 N·m
1G締め:車を降ろしてからアームの付け根を本締め
ここがこの作業でいちばん大事なところです。整備書でも、車両を降ろしてタイヤが完全に接地した空車状態で、アームをクロスメンバーに固定するボルトを締めるよう指定されています。
理由はブッシュの構造にあります。ゴムブッシュは内筒と外筒にゴムが接着されていて、ボルトを締めた瞬間の角度が「ねじれゼロ」の位置になります。
- ジャッキアップでタイヤが垂れ下がった状態で本締めすると、車を降ろした瞬間からゴムが常にねじれた状態になる
- その状態で毎日走ると、新品のブッシュでも早く亀裂が入る
やり方は、車を地面に降ろして(荷物を降ろした空車状態)、車体を数回上下に揺すってサスペンションを落ち着かせてから、輪止めをして、パーキングブレーキ(ATはPレンジ)をかけたうえで下にもぐって本締めします。整備書の指定は前側ブッシュの固定ボルトですが、フロントサポートとリヤプレートもブッシュのねじれに関わるため、私は同じく1Gで本締めしています。
- 前側ブッシュのボルト・ナット:95 N·m
- フロントサポートのボルト:100 N·m
- リヤプレート:前側1か所の後側ブッシュ固定ナット 110 N·m/後ろ側2本の車体固定ボルト 150 N·m
車の下にもぐるスペースが足りない場合は、カースロープに載せてタイヤを接地させた状態で作業すると安全です。
交換後に必ずやること:アライメントとアイサイト
ロアアームを交換するとタイヤの向き(アライメント)が変わる可能性があるため、整備書では交換後にホイールアライメントを点検し、必要に応じて調整するよう指示されています。さらに整備書の注意事項には、サスペンション部品を脱着・交換したら、アライメント調整の有無にかかわらずアイサイトとVDCの調整を行うと書かれています。
ロアアームを脱着・交換したら必要な作業(整備書より)
・レーンキープアシストの学習値クリア(アイサイト付きモデル)
・VDCセンサーの中点設定
・オートヘッドランプレベライザーの再初期化(装着車)
アライメントを調整した場合はさらに
・ステアリングアングルセンサー(舵角センサー)の調整
これらは診断機(スキャンツール)が必要な作業です。DIYでアームを交換したあとは、アライメントテスターと診断機がそろったディーラーや整備工場でアライメント測定と調整をお願いしましょう。アイサイトは車の向きと進路を前提に制御しているので、アライメントがずれたまま乗るのはおすすめできません。
よくある失敗と対策
| 失敗 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| ジャッキアップ状態で本締め | ブッシュが常にねじれて早期に亀裂 | 付け根のボルトは仮締めで止め、1Gで本締め |
| 古いセルフロックナット・コッターピンを再使用 | 緩み止め効果が落ち、ナットが緩む | 再使用禁止部品は事前に新品を用意 |
| コッターピンの穴が合わないのでナットを緩める | 規定トルクを下回り、ナットが緩む原因に | 39 N·mで締めてから、整備書の指定どおり60°以内の増し締めで穴を合わせる(緩めて合わせない) |
| ボールジョイントの段付き部を確認せずに締める | 位置がずれたまま固定される | ハウジング下面に突き当たっているのを目で確認してから50 N·m |
| アルミ製アーム車に板金製の情報を当てはめる | 後側の構造・トルクが違う | 自分の車のアームの材質を最初に確認 |
まとめ
- レヴォーグVM4で「ハンドルを取られる」「段差でコトコト」はロアアームブッシュの破損・劣化を疑う
- 板金製アームのトルクはキャッスルナット39・ハウジング50・スタビリンク60・前側ブッシュ95・フロントサポート100・リヤプレート110/150・ホイール120 N·m
- アームの付け根は必ず1G(接地・空車状態)で本締め
- 交換後はアライメント測定と、診断機でのアイサイト・VDCの調整まで行う
足回りの部品は、緩みや締め忘れがそのまま事故につながります。少しでも不安があれば、無理をせずプロに任せてください。
🔧 あわせて読みたい足回り整備
整備士 nao(ナオ)
元自動車検査員
整備歴15年
本記事の内容は整備マニュアル・メーカーサービス情報・現場経験に基づき執筆。プロメンテ(sps-nk.com)では実車写真と動画を交えた一次情報を発信しています。





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